トレーサビリティとは、製品がどこで、いつ、どのように作られ、どうやって消費者の手元に届いたのかを、あとからたどって確認できる仕組みのことです。
たとえば、商品に不具合があった場合に、その原因となる「同じ原料や製造ロットの製品をすぐに特定できる」のがトレーサビリティの強みです。
これにより、必要な範囲だけにしぼった対応ができ、回収対象を最小限におさえることができるため、トラブル時の損害を大きく減らすことができます。
逆に、もしその情報がなければ、関係しそうなすべての製品を回収しなければならず、膨大なコストがかかってしまいます。
さらに、トレーサビリティに取り組むことは、製品づくりの記録をしっかり残すという意味でもあり、その過程で作業内容を見直すきっかけにもなります。
これにより、事前に問題点に気づいたり、小さなトラブルの芽を早くつぶしたりすることができるため、予防としての効果も期待できます。
とはいえ、トレーサビリティを実現するのは簡単なことではありません。
原料の入荷日や原産地、担当者の情報などをきちんと記録し、それを製品と結びつけて管理する必要があり、システムの構築や運用に多くの手間とコストがかかるのが実情です。
そして、その効果がどれだけあるかを見積もるのも難しく、すぐに投資回収できるものではないため、現場ではどうしても後回しになりがちです。
結局のところ、トレーサビリティは「やった方がよいのはわかるけど、そこまでしてやる必要があるのか?」というふうに受け止められることが多い課題です。
しかしこれは、単なるコストや手間の問題ではなく、企業の理念やビジョンに基づいてしっかり取り組むべきテーマなのです。
